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取り急ぎ・・ご報告

2月も今日で終わり。

 


2月に、おめでたい事が二つありました。


ミュゼで初代セコンド・シェフを務めた

杉山政秋と


今年、1月までセコンド・シェフを務めた

佐藤陽介、


が、それぞれ独立しました。

 


詳しいお店情報は、後ほど・・・

ルーツ

かつて、アラン・デユカスがこんなことを言ってました。


”料理を作る上で最も重要なことは、自分のルーツを知ることである”

 


自分が何処で生れ、

どういった環境で育ち、

どういった食生活をし、

何に、誰に、影響を受け、

今に至っているのか・・を

まず、知ることが大切である。


そして、今、その自分が

何処の国の

何処の土地で、

どういった人に料理を提供しているのか・・を

考え、知ることが、

技術以前に

もっとも重要なことなんだよ・・

という意味だと

自分は解釈しています。

 

そうした彼の哲学が、
形として、世に知られるようになったのが、

モナコにあるホテル“ロテル・ドゥ・パリ”内の

レストラン“ルイ・キャーンズ”時代でした。


彼は、それまでのホテル料理の在り方、

厨房のシステム、シェフの在り方まで

一瞬にして変えてしまった・・・


そして、その料理哲学に則り、

料理を南フランスで提供するにあたって、

それまでの、ただ豪華で贅沢なパラス的フランス料理を捨てて、

その土地の料理であることに徹底的に、こだわった。


地元の人なら誰もが知っている、

食材、昔ながらの伝統的な料理法、組合せを

徹底的に学び、それを自らのルーツと重ね、

とてもシンプルで洗練された、

ルイ・キャーンズの高級プロヴァンス料理を完成させ、

世界中を驚かせた。


そして、彼は、

その後、わずか33カ月で当時最年少三つ星シェフとなったのでした。

 

その料理を見て、

どんな背景が見えてくるのか・・

 

ランドで生まれ育った自身のルーツ、

師と仰いだシャぺルの影響、

そして、今 自分が料理を作っている土地(プロヴァンス)、

それを、提供する先は世界中のVIPが集まるモナコである・・と

いうこと全てが関係し、

ルイ・キャーンズの料理は形作られていることが分かる。

 


デュカスの在り方や料理がどうであるか以前に、

自分は、こうした彼の哲学に少なからずとも影響を受けました。


僕がこうしたことを知り、
感じ、考えていたのは、21歳の時です。

 

僕が、フランスに行った1995年は、

ロビュションが引退を表明し、

デュカスが後継者となる・・という噂が

街を賑やわせてました。


フランスを旅する

異国人の自分の耳にも入るほど、

メディアが大騒ぎしており、

そこで初めてアラン・デュカスに興味を持ったものです。


まだ、何も知らない自分は、

デュカスの言葉に魅了され、

多くのことを学び、影響されました。







 


3月のCOLLECTIONに

“流氷”という作品があります。


自分のルーツは、

網走であり、

オホーツクの海である・・・という

思いの中、この作品は生れました。



デュカスの話に始まった、
上記の長文で何が言いたかったかというと、


“独自性を表現すること”

こそが、ある種フランス料理のトラディションではないだろうか・・

という話でした。

アイデンティティー

雪解け 2010

今年の“雪解け”はこんな感じ。


雪解けを表現する場合、
この3要素。

・雪
・芽吹く、植物
・大地(土)

これらを網羅し、皿に配置すれば

“雪解け”・・・となる。


雪は、パコジェットでパウダー、或いは白いエアーで。

そこから顔を出す植物は食用の花なスプラウト、ハーブなど。

土は、茶か黒で味わいのバランスがいいナッツ系ものを。

こうした発想やプレゼンは、もはや、
やり尽くされている感があるので、
発想的にも絵的にも、
全然、価値がないです。


どの辺りにオリジナリティーと
アイデンティティーがあるのか・・が重要。

 

このテーマの着想が外・・ではなく、
内から出たものである・・という確信があるので
毎年、好んでテーマにしています。


料理におけるアイデンティティー。

ルーツ・・独自性。

 

それは、雪解けに対する思い入れと
その景色を描写する際にどれだけのリアリティーが
自分の中にあるのか・・・がとても重要であるし、

そのリアリティーが無いのであれば、
自分的には、全く価値がないです。


パブロ・ピカソが

かつて、こんなことを言いました。

“君には、パイプの絵は描けやしないよ・・

何故なら、君はパイプを吸ったことがないだろ” と。


要するに、形だけ上手になぞることができたとしても、
そのモティーフに“思い”がなければ、描き切ることはできない。

何も伝えることができないよ・・と言う意味ですね。

 

僕が住む、北海道、札幌・・・いや、もっと言うと、
自宅のある西区平和は、とんでもないド田舎で、
4月でも余裕で雪があります。

下手すれば、5月でも

自宅の前だけ雪があったりします(日陰なので・・


3月中旬過ぎから、山の付近で(家の近所・・
蕗の薹を毎年収穫します。

4月には、本気で山に入ります。

 

雪が溶けはじめ、その白い中から顔を出す、

蕗の薹やその他の植物を見ると、

とても、嬉しい気分になりますし、

その高揚感は、人より

春を遅く待ちわびた分、とても大きいものです。

そのエモーションをシンプルに具現化する・・・行為こそが、
自分にとっての料理で、価値なんですね。


見た目や味わいは、
料理において、とても重要ですし、
全てといっても過言ではないのですが、

自分は“背景”に何があるのか・・ということに価値を置いてます。


それは、非常に評価されずらく、
分かりにくいものです。

 


そういう料理人や料理が増えると

食べる側は、とても面倒でしょう(笑

 

 

3月のコレクション

3月のメニュー

http://musee-co.com/contents/10.03.htm


テーマ:雪解け



2004年に初めて、雪解けをテーマに料理を作りました。



かれこれ、6年前の料理です。

雪解けの頃、大地(ジャガイモ)から顔を出す
フキノトウを表現した皿です。

今思えば、とても素朴な一皿・・・。


この当時、景色を皿に表現する・・なんてことは主流ではなかったです。



2005年のエル・ブリ・コレクションで
フェラン・アドリアも“雪解け”という一皿を発表してました。



同じところに着眼点がある。


そこに価値を感じたりもしますが、

もっと、上の価値を見つけたいと思うと

理解できる人は相当少なくなるのでしょうね・・・



今は、少し

いい時代になったと思います。








資質=ゼロ

どの世界で仕事をするにしても
脳の無いヤツはダメです。

資質がある・・とか無いとかいいますが、
直訳すると脳が機能してるか、してないかということでしょう。


センスがあるとか無いとかは、
プラスαの部分であって、
脳のある人は、センスがないと自覚するので
無いなりに成功することを考えるのです。

脳がある・・というのは

“自覚する”

“気づく”

ことの出来る人なのでしょう。

人生の殆どは、その“気づき”があるか、無いかで決まりますので。


何故こんなことを話すかと言うと、

最近、新卒の若いスタッフが入り、

ふと、昔の自分を思い出したからです。

 

そう言えば、かつて自分は料理人には向いていないと気づき、
当時の会社を辞めて、
フランスに旅立ちました。

まぁ、ヒデ風に言うと
自分探しの旅みたいなモンです・・・(恥ずかしい


どうしても見たい絵があったというのも理由ですが、
だったら1年もかかるはずもなく、
1年居るにはそれなりの訳があるのです。


最終的に、
ナニに気づくかというと、

自分は、料理人には向いていないのは分ったけど、
かといって、ナニが出来るわけでもないことに気づくわけです。

自分には何も無いんだな・・・と気づいた時、
意外とそのあとは、すんなり前に進めた気がします。

ゼロであることに気づけるというのは、大きな収穫でしょう。


そこでやっと、何でも出来る様に努力でもしようかな・・と思ったりするわけです。

 

ゼロの人。

 

チャンスですね・・・

唯一無二の存在

先日、シャガール展に行って来ました。


シャガールは、僕の人生を変えてしまった画家なので、
自分の中では、特別な人です。

 

思い起こせば・・・


13歳の頃、美術の教科書の表紙だった
シャガールの絵を見て衝撃を受け、

魂を奪われ、

その後も精神は浮遊したまま、

時が過ぎ、

21歳の時、想いは募り、

南仏ニースにあるシャガール美術館に行きたいが為に、
ひとりフランスへ旅だったものです。




・・・・だから、どうしたって?

 

 

で、今回のシャガール展はどうだったか早く言えって・・?

 

はい、

正直、ショボイです。

 


作品の内容ではなく、
規模としては、非常に地味でした。


しかし、シャガールはやはり素晴らしかった。

 

油は、一枚しかなかったのですが、
大きなカンヴァスに絵描かれたパリの空は圧巻でした。

 

たった一枚でも十分な存在感だったと言えるでしょう。

 

他は、リトだけですが、

ギリシャの牧歌的伝説ダフニスとクロエを題材にした、
挿絵が10枚以上ありまして・・・・

その連なった作品群は、

様々な色の光を放ち、

見事に神話の世界を表現してました。


シャガールの場合、

絵で詩を表現する・・と言うよりも、

“色”だけで、詩を表現できるのが、凄い。

 

カンヴァスに無造作に置かれた“色”は、

無秩序の中に世界を作り、

微妙に混ざり合った色は調和し、

言葉を語る。

 


色が言葉を語る??

コイツ、イカレテいるんじゃねーの って?・・

 

大丈夫です、

遭難の後遺症です(笑

 

で、


そういうシャガールの世界に圧倒され
帰ってきたのですが、

ここ5,6年、

料理の世界でも

“詩的表現”という言葉が頻繁に使われるようになりました。


それこそ、
自分が最も目指している、
料理のカタチであって、

いかにして、言葉ではなく、

料理で語れるか・・ということに

日々、心を削っているわけです。

 


どうか、料理に耳を傾け、

その言葉を聞いてあげてください。

 

もし、何か聞こえてきたら・・・

 

ナニカの後遺症かもしれません(笑

冷凍ディスク

 
冷凍ディスク↓




ゲル化剤で薄く透明なシートを作り、
それを冷凍するだけの技術なのですが、

ゼロから考えるとなると
相当のテクニックが要求されます。

まず、ゲル化剤の開発から始めるわけですから(笑



この冷凍ディスクは、
テクニック云々より、
景色を皿に再現するために強引に編み出した・・ということに
何より価値を感じています。




そう、本を見てルセット通りに作ったものや
誰かの料理をビジュアル的にパクッたものとは、
全く価値が違うのです。


自分の場合まずは、発想ありきであって、
発想がオリジナルであるかどうかのみが“価値”なんです。

技術というものは、常に後付けですから・・・


なので、テクニックなんて
どうでもいいんです。

 

・・・ですが、この冷凍ディスク、
我流であるが故、初めは意外と上手くいきませんでした。


私の場合、いつも料理の神が降りてくるので(笑
どんなテクニックも2回ぐらいで大抵は上手くいくのですが、
今回は最後の工程がどうも完璧じゃなくて
少し、苦戦しました。

 

何が上手くいかないかというと
冷凍してからの工程です。

ラップからキレイに剥がせないんですね。


・・・これが、相当イライラします(笑






目指すのは、

完璧に美味しい液体を

完璧な濃度で、

完全にフラットなバットに

完璧に均一に流し、

完全な円にくり抜き、

まったく傷つけず、

ラップを敷いたバットに並べ、

完璧に美しい状態で

ラップから外し、

皿に盛り付けることです。

 

????


殆どの人はやったことがないので
ピンとこないでしょう。

 

で、興味もないでしょう。(笑


わかってます・・・

 

始めから誰も興味の無い話だと分かってて、
長々と話をしているので・・・

続けますが、


料理人で、ある程度のレベルの人なら、
逆に“そんなもん、簡単だよ”って言う人もいるかもしれません。(逆??


はい、その通り 簡単なんです。


6枚ぐらい作るならね。


仕込みの都合上、30枚ぐらいを一気に作るので
バットにラップを重ねて、何枚もやっていると
上下のディスクが剥がれなくなるんですね・・・


で・・最近・・簡単に大量生産する
テクニックに気づきました。


このテクニックを自在に使うことが可能なったので、、
様々な料理に活用できます。



例えば、

苺のピュレを使えば、極薄に凍ったガラスのような赤いディスクですから、
とてもキレイだと思います。

それを使い、

カクテルグラスに赤いディスクで蓋をして、
中にフレッシュの苺と相性のよいソルべ、ハーブ、スパイスなどを入れたデセール。

“苺のガラスを割って、一緒に食べてください”なんて言ってサーヴィスします・・


ミルフイユのように間に何かを挟み、何層にも重ねてみても面白い。

クルーズ皿に冷凍ディスクで蓋をして、
上から温かい液体をかけるようなデセールもいい。

夏場なら、前菜、魚料理でも肉料理でも温度差を楽しむ料理に使える。

カラーヴァリエーションも黒、白、赤、黄、青、緑、透明などなど・・・・
食材そのもので色でいくらでも作れる。
野菜やフルーツは勿論、肉や魚のジュでも作れる。

 

で、

長々と話したこれらは、


テクニックの一例で、ナニが言いたいかというと、


何かから生れた一つの新しいテクニックは、
既存のクラシックな技術と結び付けることで、
何十倍にも派生していくという話です。

どんなテクでも自分のものにして、消化し、
派生させることができない人はダメですね。

そうしたものを整理し体系化して、人に伝えることができたのが、
フェラン・アドリアなんでしょうね。


最終的には、それを駆使して
人を喜ばせること“のみ”に価値があるので
テクニックだけを身につけても全く価値はないです。

 

ここまで話して

何ですが、

この冷凍ディスク・・・

テクニックとしては、ホント大したこと無いな〜って

つくづく思います。


是非、ご家庭でも試してみてください。

きっと、旦那さんが言葉を失うはずです・・・・別の意味で(笑

フレンチ界のゴッド・ファーザー

最近、ロビュションの本を買いました。

帯のコメント
“700以上のレシピと100以上の食材のノウハウが満載!
コレ一冊でフレンチのすべてがわかる!!”

だってさっ・・・

久々に出た、ロビュションの新刊。
しかも、メチャ分厚いです。

コレ↓




更に、価格が6400円!

世界最高峰のシェフが、そのすべてのノウハウを公開!ってさ・・・

 

う〜ん・・・・ちょっと欲しいかも


と思い、

迷わず買ったのですが、

ホントに分厚い立派な本でした。


でも、安すぎるなー・・と思い、

心配気に本を開きますと・・

 

 

写真が少ない・・


3ページぐらいしか無いです・・(悲

 

コレが安さの秘訣なんですね。

印象としては、

ただ、過去の料理の焼きまわしを
誰かが活字としてまとめたカンジです。


内容ですか?


そうですね・・過不足無い感じで
よく出来てます。

まるで、彼の料理そのもので
欠点がなくツマラナイ・・・かな。


女性も料理も何もかも、
完璧なものほど、退屈なものはないです。


何事も

付け入る隙がある・・というのが、
魅力なのですから(笑

遭難野郎

 3日前、

ニセコの山で遭難しました(笑


・・・あまりに必死すぎて、全く笑えませんが・・・


過去の記憶を辿っても、

今回ほど必死だった経験は、思い浮かびません・・・(悲

 

 

で、

ニセコに行って来たのですが、

冬のニセコに行くのは、
かれこれ15年ぶりでしょうか。

ニセコと言えば、
かつてプリンスホテルに勤めていた時、
新入社員研修という名のもと、
当時、道内のプリンスホテルに入る新卒者が全員、
ニセコ東山プリンスに集められました。

1週間、みっちり研修です。

朝5時ごろ起され、
ニセコの草原をランニング。

その後、朝食を摂り、
休む間もなく研修です・・・・

今思えば、

教育と言う名の洗脳ですね・・所謂。

そういや、その新入社員同期の中に、
コートドールのシェフ、中本もいましたね。

 

それから、17年が過ぎましたー・・・ってか・・


本当に、何も無い田舎だな〜という印象しかなかったのですが、
先日行って、少し驚きました。

 

当然、情報として
この5年で大きくニセコが変貌したことは知ってます。

ごく親しい知人も
ニセコでビジネスしてますので、
行ったつもり・・になるほど、よく聞かされてましたので。


行った感想としては、
パスポートのいらない外国“niseko”という印象。

商売の仕方も完全に外国のリゾート的発想のものばかり。
プライスも勿論、リゾート価格。

リーマンショックで少々凹んだと言っても、
まだまだ、ニセコにはビジネスチャンスがありますね。

物凄く、今更感があるのですが、

全然、入り込む余地が残されてます。


今のうち、カミムラ ユーイチに宣戦布告しておかないと。(笑

と言うわけで・・・

札幌の飲食業界をメッタ切り!
闘う男の毒舌ブログ・・・

こんなタイトルで
本当にそんな内容だったら、

少しだけ面白いです・・(笑


勿論、

誰が考えても、冗談に決まっているのですが・・・。


・・・・・・・・・・・

ブログを継続できる人って、
基本2種類いて、

・マメな人

・暇な人

です。


自分?

どちらでもないので、
続かないでしょう・・・


そんなわけで、
気ままに綴ります。