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グラン・アケッツ


今更ですが・・・・


友人のグラン・アケッツに会いに、

シカゴに行って来ました。



昨年、わざわざ札幌まで来てくれて、

こんなド田舎で・・山奥のミュゼまで

足を運んでくれたので、

そのお礼も兼ねてです・・・・




去年のミュゼでの一枚。




グランは、2年前の東京料理サミットから知ってましたが、

ロビュション、ガニエール、フェラン・アドリアなどが参加していた

この会において、まだまだ認知度は低く、

一般的には、とても地味な存在でした。

未だ、日本での認知度は低いですが、

毎年発表される【世界レストラン・ランキング】で今年、2011年では、

世界ランキング4位です。


勿論、アメリカでは、ナンバーワンです。


現在のガストロノミーにおいて、

プレゼンテーションとビジュアル・センスでは、

世界でトップだと僕は感じているし、

専門化の評価も・・・同様です。




実は、ここまで書いてなんですが・・・

あまりそういったことに、僕は興味がないです・・。


興味を持つか持たないかは、彼の人間性だけのことであって、

彼がミュゼに来て食事を楽しみ、

その後、一緒にお酒を飲み・・

様々な対話の中で、彼と繋がり、

お互いを尊重できる関係を築けたことが、

自分にとっての価値です。


その後も彼は、賛美の言葉とともに、

自分の本をアメリカから贈ってくれました。


こうした繋がりこそが、何より財産であり、

作品を知り、感じる上でもっとも重要な背景です。



彼という人間を知った上で、

彼が創り出す世界を堪能する・・・・


味覚を超えた精神の部分で

何かを捉えられないようなら、

ガストロノミーの魅力は半分以下です。





・・・・・・・・・・・・

そんな経緯で・・

遥々・・・マイナス20℃のシカゴまで

出かけて行きました・・・



これから繰り広げられる、

グラン・アケッツのエンターテイメントをご堪能ください。







・オイスター・リーフ

牡蠣の味がする葉っぱを牡蠣に見立てて・・・












・シュリンプ


海老を使った連作です。

3皿で一つのコンセプトを描いてます。





ひとつずつ・・・説明すると

気が遠くなってきたので・・・・流します。



















この皿あたりから、少しテイストが変わってきます・・・





この日の為に、用意してくれた

スコットランドのライチョウです。

雪山で仕留めた情景をそのままプラトーに表現してます。

これは、物凄い迫力のあるプレゼンでした・・・




デクパージュしたあとのライチョウ。







さりげなく置いてあったプレートを目の前で組み立てます。








このようにして、極薄のパートを広げ、

生春巻きのように、具材を乗せて・・・










超モダンな料理が続きますが、

あえて、クラシックを遊びで入れてきます・・。








トゥールダルジャンのように・・・

そんなイメージだと思います。




目の前で鴨をデクパージュして、

ガラをプレス機にかけて、ジュを抽出し、ソースにします。








カトラリーもクラシックスタイルの使いこまれたクリストフル。






ちなみに、出されるワインも

バカラのオールドスタイルのカットが入ったグラスで提供されました。

芸が細かいです・・・。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



ここからは、スイーツワールド。

まったく胃に負担のない、空気のようなデザートが連続で8品。



















どれも、香りだけで食べさせるような作品です。


素晴らしい完成度。


常人の理解は、得られないと思いますが・・・。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

最後は、世界に影響を与えた、

シリコン・テーブルクロス。




テーブルの全てが、皿に変化し、

テーブル全体にグランが絵を描きます・・・
































様々な最新技術で、ショコラの世界を描きました。


勿論、味も完璧・・・というか、分かりやすく美味しいデザートです。




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実は、ワインもデギュスタシオンで、

それぞれの区分に合わせ、ソムリエが丁寧な説明のもと、

完璧なマリアージュで提供してくれました。


当然・・・何を言っているかは、全く分かりません(笑


何杯出たかも覚えられないほどの量です・・・・



お陰で、完璧な酔っ払いのおっさんです。


最後に、キッチンに案内され、

酔っ払った、おっさんもご機嫌の様子です・・・




素晴らしいキッチンです。

グレーと白のシンプルな配色、

スタイリッシュな白のタイルが清潔感と機能性、

全体として、洗練された印象を与えます。


・・・実は、リニューアルしたミュゼのキッチン、イデアのプライヴェートキッチンは、

ここのキッチンのデザインを参考にして、取り入れてます。


絶妙なグレーもトーンもほぼ同じ・・・。


こういうのを世の中では、パクリというらしいです・・・・・(笑



・・・・・・・・・・・・・・

感動的な4時間以上にも及ぶディナーでしたが、

1分たりとも飽きさせない素晴らしいエンターテイメントでした。


一皿一皿にコンセプトと細かな味わいや印象付けのテーマもあり、

食べた感想を書き始めると、

文字を起こすのに膨大な時間を費やすので書きませんが、

書かない理由は、それだけではなく、

食事の感想って・・・自分は、基本的に

語りたくない・・という考えです。


勿論、素晴らしかった場合、

可能であれば、本人に直接伝えますし、

賛美の言葉を惜しみなく捧げます・・・



しかし、言葉で伝えられる範囲はとても狭いです。

言葉にすると・・・安っぽくなる気がするので・・・。


では、良くなかった場合は?

それも同様に、自分の記憶の中にしまっておきます。


自分は、評論家でもなく、グルメ客でもなく、

かといって、ただの一般素人の客でもない・・・


100%食事を楽しむ為に

自腹を切って食事に来てる・・ただの客ではありますが、

ある部分では、同じステージに立つ料理人です。


料理は、どんなものであれ、

【自己表現】のひとつに違いはないです。

自己を投影した作品に対して、

同じ表現者として、どう敬意を払い、どう向き合うか・・・。

・・・・・・・・

作品に対して、どう感じるかは、

その人の自由です。


しかし、それはあくまでその人の【主観】でしかなく、

【主観】は、その人のみが感じたことである以上、

本当は、他人に伝える意味はあまりないと思ってます。


・・・・・・・・・・・


何故か同業者の人は、いじわるく

あら探しするように食事する人が多いです・・・


プロの料理人なので、

あらを探せば、いくらでも出ますが、

あらを探すような行為に僕は、何の意味も感じません。


他人を否定し、周りを不快にさせ、

自分が費やした時間さえも無駄にして、

誰も得しない行為と思うので。



誰も人を不快にさせるつもりで料理を提供する人はいません。

そこに、答えがあるのではないでしょうか・・・



自分が同じフィールドでプロとして、

料理を作っている以上、普通の人が感じ取れないものまで、

読み取り・・・それに最大限の敬意を払う。


それがあるべき姿だと思ってます。



・・・・・・・・・・・・・・

ガストロノミーとは、ただ単純に美味しいだけでなく、

それ以上の価値を創り上げる食のステージです。


それ以上の価値を創り上げることは、当然難しく、

様々な能力が必要とされます。

そして・・・フツウでは考えにくい【何かしらの】・・犠牲も払っているはず。


そういう食の最先端のステージで【何か】を感じ取るのは、

食べる側にも、それなりの能力を要求してきます。



上から目線的な感じではなく、

そういう世界があり、

そういう世界の中のお話しです。


・・・・・・・・・・・・・・

料理には、

誰が食べても美味しい料理もあれば、

誰が食べても美味しくない料理もある。

そして、食べ手を選ぶ料理も存在するし、

その存在理由もある。



自分が見つめている先にあるものが何なのかは・・・

未だ・・・ハッキリ掴めてませんが、

今回の体験で、大きな経験をし、

それが、これからの自分の表現に繋がることは確かです。



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この貴重な経験を与えてくれた、

グラン・アケッツに心より感謝を捧げます。


そして、出会うきっかけを作ってくれた、

東京のタカザワ夫妻にも心より感謝を・・・